ヒミツのコトバ

 

 キスの最中、密やかに相手の顔を見るのは至福である。
 言葉にするより明確に、その時の表情が全てを語っているから、誰もが秘め事をするようにそっと相手の顔を盗み見る。
「……キスん時、目ぇ開けんのは反則だぞ」
 ふと絡んでしまった視線に唇を離してそう云うと、まったく同じ言葉が返されて。
 その一言さえもが睦言に変わる瞬間を、誰もが知らず心待ちにしている。
 そうしてまた瞳を閉じ、唇を重ね、そっとその温もりを求めるのだ。



2000.09.01