ヒミツのキモチ2

 

 その仕草に、その言葉に、その瞳に。全てに心奪われている。
 乱れた吐息の下私を呼ぶその声も、拗ねたような子供じみた口調にも。
 上等の猫を思わせる綺麗に肉付いた細い肢体を丸めて眠るその姿も、抱きしめた時唇に触れるあの堆朱も、全てが特別で。
 肉欲よりもただ感情のみで、抱きしめて眠りたいと渇望する。
「……シード」
 浅い揺蕩に身を任せているその名を呼び、うっすらと開かれた瞳が当然の事のように私を捉え微笑うその様子を、愛しいと思う。
 誰にも壊させたくないと、もしも壊すことがあるならば、それが自分であれば良いと強く願っている己に気付いて、小さく苦笑を刻む。
 この日常を失いたくないと切望する程に大切な。
 悪くはない。甘い胸の痛みも、知らずにいた己の人間臭さも。
 ただただ小さく笑って、私はまたその身体を抱きしめる。

 このキモチを言葉にする日は、きっと来ることはないだろうが。



2000.09.01