ヒミツのキモチ1
細い銀縁眼鏡を掛けて本を読む、クルガンの姿が好きだ。
眼鏡の良く似合う整った面立ちに、何の表情も浮かべることなく活字を追っているその姿が。
俺を追い詰める時のあの激しさとの、そのギャップが。
「……なぁ、クルガン」
その横顔を見飽きコトなんてないけれど、如何にも退屈だと云う声を出してその名を呼んだ時、ふとその瞳に浮かぶ光の優しさが、やっぱり好きで。
小さく苦笑して、零される謝罪の言葉も、俺の髪を撫でるその仕草も。
耳にしっとりと届くバリトンが心地よくて、俺は小さく笑ってクルガンに腕を伸ばす。
そんな俺に嘆息しつつもゆっくりと身体を引き寄せてくれるその腕も、触れた布越しに伝わるその心音も、俺にとっては大切なもの。
こんな些細な日常に、惚れてるんだよなと再確認して。
それがこの上なく擽ったい。
そんなコトは何一つ、本人には云わないけどな。
2000.09.01